2023年4月の日記

20230422

人を人以外のモノにたとえて貶める言説は、それに対する批判と応答を表現の適否で占められ、正当性を論じる余地を確保しづらいように思える。かといって端的に人としてどうかを問い質すことは遠からず人権の議論に触れるため好まれない──この地で無難に共有可能な「人」観念はせいぜい「人それぞれ」程度だろう。それにしても人を人として論じてやれば、表現の適否を論じるだけの呑気なおしゃべりの場を、面倒なテーマで台無しにすることも可能だろう。だからといって、ある種の人々が営む惨状に原民喜を援用し、このありさまを淡々と提示してみせる「表現」は採用可能か、どうか。

20230415

職場の送別会を兼ねた懇親会で数年ぶりに上洛し、その帰り、駅前のヨドバシカメラに立ち寄る。こんにちの消費者にとって実店舗の意義は、モノのリアルなサイズ感を把握できることで、その経験がのちのネット通販で駆り立てられる購入衝動に正しく水を差してくれる。もっとも、家電と機械の実物を眺めるだけで十分楽しいなら、それを有意義と言ってもよい。今後気の滅入る休日が増えることを見越して、プラモコーナーを物色するも、いまひとつ食指をそそられない。品揃え以前に、その一帯で流れるワルキューレが醸し出す、そこはかとない場末感が、その場にとどまることを耐え難く感じさせたのだろう。最上階の書店は棚の背が高いばかりで面白みを感じられず。適当な文庫本を一冊買って引き上げる。

20230401

呑気な「コメンテイター」らが、亡くなるのは高齢者だけ、と語るたび、3つの数字が脳裏に繰り返された。「日本人の人質は全員が無事」と歌われた当時、日本人と名が付く者らにさえかくも冷たい未来を、想像できたろうか──想像できたし、だいたい知ってた。日本人の人質が元気そうに笑顔で手を振る様を興奮気味に伝え続けるレポーターのくだりに対応するのはさしずめ、「マスクを外して笑顔満開」ではないか。歌った本人が今日思うところは推し量りかねるが、良い歌を残されましたなと感心する。

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